Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第8話 影】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

「敵襲―!!」
 
突然、頭の中で大きな声がした。誰の声だったのかはその時は分からなかった。
 
 
皆一斉に素早く起きた。
CAUTIONCAUTIONAn each member, it is ranked placement immediately.
異常を知らせる自動放送がすぐに作動した。
サイレンも鳴りまくっている。尋常では無いと一発で分かった。
TASK1発動!SP部隊は速やかにゲート50につけ!」
リレイドさんが宿舎に居たSP部隊全員に向かって叫んだ。
「了解!」
皆はそう言った瞬間に一斉に行動を始める。
僕は何が何だか分からない状況に困惑していた。
「い、一体何が……」
リレイドさんが駆け寄って言った。
 
「…落ち着いて聞いてくれ。これは訓練では無い。実戦だ!」
「じ、実戦?そんな…2ヶ月と3週間後じゃなかったんですか!?」
「そのはずだった。だが彼らはその期間を裏切るほど人間世界に操られている集団だ…
 彼らはもう完全に心情を失った人間世界の操り人形なんだ!!」
「…………………!」
 
 
 
 
 
 
『操り人形』
手や指などで操る人形。操られる媒体は操るものによって完全にコントロールされる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その媒体に行動意識は存在しない。
 
 
 
 
 
 
 
急いで!これを持って早くゲート50に行くんだ!」
リレイドさんはサッと僕の手のひらに何かを置いた。
何か目に巻きつけるもののようだ。
「…これは?」
「飛行物体特定兼撃墜ポイント表示システム…通称『Flex』だ。説明は後だ!早く行くんだ!!」
「は、はい!」
 
言われるままに僕は急いでゲート50へと向かった。
様々な部隊が移動する群衆の中を
掻き分けるようにして50』の文字を目指して行った。
「くそっ!なかなか進めない!」
進みたくても進めない。空を飛びたくてもこの群衆の中では不可能だ。
 
50505050!!!」
近いようで遠かったゲート50はあと少しだ。自然と50を連発している自分が居た。
 
あと少し…
 
あと少し…
 
もう少し…
 
もう…す……
 
 
 
 
 
 
 
「……君、……君!おい!……君!!」
「!!」
目を開けると目の前にリレイドさんがいた。
蛍光灯の明かりが煌々と自分の顔を照らしていた。
 
「敵が…早くしないと敵が!!」
「落ち着け!敵は今いない!君は夢を見ているんだ!」
「夢……」
夢だった。久しぶりに悪い夢を見た。
起きてほしくないのに…こんな未来望んでも無いのに…
まるでこれからここで起きるかのような夢だった。夢なのに夢じゃないみたいだった。
 
随分うなされていたようだが…何の夢だったんだ?」
「酷い夢でした…まるで未来を見ているかの様で…」
僕はリレイドさんにその悪夢を語った。
彼はしっかりと僕の目を見て話を聴いてくれた。
 
 
辺りは静まり返っていた。ふと先を見るとエントランスで巡回している影が2つ見える。
彼らは交代制の夜勤監視員らしい。いずれ自分もやることになるのだろう。
壁に掛けてある時計はまだ午前5時を示していた。
通常だったらまだ起きる時間では無い。
秒針の音だけ聞こえるのが不気味だった……。
 
「……なるほど。敵が奇襲攻撃をしてきた時の夢を見たわけか。」
「はい…。」
 
「ところで……それ本当に…夢で見たん…だよね…?」
「え、あ…はい…」
 
 
 
するとリレイドさんはその場を立ちあがってゆっくりと歩きながら言った。
 
 
 
その夢…全てこれまであった奇襲訓練とそっくりなんだ。」
 
 
 
 
 
「……嘘だ…。」
 
思わず無意識に声が出た。何でこの時こんな事を言ったのか今でも分からない。
「嘘じゃない……証拠がこれだ。」
と言って、リレイドさんが自分に手渡したのは夢に出てきたあの媒体だった。
 
 
 
 
 
「飛行物体特定兼撃墜ポイント表示システム『Flex』。本当に部隊で使っている…」
 
 
 
 
 
 
 
 
頭が真っ白になった。
いや、真っ黒と言うべきなのか…言葉では表せない何かに襲われていた。
嘘から出た誠とは言うが……誠では済まない予感がした。
 
「それだけじゃない。
 自動放送・TASK1SP部隊がゲート50に集まる決まり…全て実在する。」
 
 
予感は的中した。それは的中してはならない予感のはずだった。
ここまで来ると誠どころか未来予知……俺はエスパー系なのか?
 
「全部…夢じゃないんだよ…」
 
「………」
何か言え、自分。
「………」
何か言えって、リレイドさんが待ってるじゃないか。
「…こ……」
はっきりしろ、自分。
「…これが……」
 
 
 
 
 
 
 
「…」
リレイドさんが心配そうに下にうつむいた僕を見ていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これが、現実なんだ…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その直後にエントランス中に響き渡る音がした。
「ポ―ッ!ポ―ッ!ポ―ッ!」
リレイドさんが呟いた。
「定時連絡…」
自動放送だった。気がつけば午前6時になっていた。
 
 
ポケモン連合軍全航空隊員に告ぐ。
 本日、大規模なTASK1の合同訓練を連合軍全部隊で行う。
午前10時までに各地方所属の航空部隊はカントー地方に集結せよ。以上。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エントランスに見えていた2つの影が消えていった。