Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第13話 追憶】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

大規模なTASK1の訓練があったあの日…
僕はハッキリと思いだした。
 
リレイドさんが父親だということを―――――。
 
小さい頃に生き別れになった限り、俺は父さんの行方など全くと言っていいほど知らなかった。
何故生き別れになったのか……当時の俺には何が何だか分からずその時の事はよく覚えていない。
見事にそこだけ記憶が吹っ飛んでいる。おそらくそこで父さんと生き別れになってしまったのだろう…
そんな曖昧な記憶の中でも、幼い頃に母さんを病気で無くし、父さんに育てられてきた事だけは覚えている。
 
そうか…思いだした……これまで聞こえていた謎の声……
父さんの声だ……
 
俺はセレンという名前を授かった。今はいない母さんが付けた名前らしい。
よく小さい頃に父さんが俺に言っていた。
 
どうして…今まで気付かなかったんだろう…すぐそばに居たのに……
 
 
 
……父さん……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
………母さん…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ここは…」
目を開けた。視界には天井の白一色しかない。どうやらもう俺はもうジョウト本拠地に戻っているようだ。
救護棟の病室で寝かされていた。気付いたら時刻はもう夜8時だった。
昼の11時からずっと今まで寝てたのか…いや、気を失ってたのか…?てか、どんだけ寝てんだよ俺。
「気付いたか…」
傍に居たリレイドさんが話しかけてきた。
「セレン…今まですまなかった……」
「…父さん……」
「あの時の事…覚えてるか?」
 
自分は首を横に振った。本当の真実を聞きたかった。
 
 
そして
 
俺は過去の全ての事実を知った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あの時、お前と私はいつもの様に生活していた。まだ、お前が小さかった頃だ。
まだお前が巣立つのには早かった時期だった。その日は私はある用事で遠くに用があって外出した。
お前は確かその時に友だちのポケモンと遊んでいたんだ。ここへ来て聞いた話だけどな…
しかし、私はその日あるトレーナーに捕まえられてしまった。その時は改めて野生って事を自覚させられたよ。
私はお前を放っておけなかった……でも…
 
これはポケモンの宿命……
 
一度捕まったポケモンはトレーナーが逃がさない限り決して野生に帰る事は無い…
それが例えどんな事があろうとも…
 
トレーナーに認められて嬉しい半面、突然お前を失ってもの凄く悲しかった…
後になって聞いた話だけどお前はその後、その友だちの親に引き取られ立派に育てられたそうだ。
私の手で最後までお前を立派な一人前のポケモンに育てたかったが…その夢は叶わなかった。
そしてセレン、友だちと共に巣立ったそうだな…
そしてナオヤという少年のポケモンとして立派に成長した……私はその知らせをココで聞いたんだ。
今までその事を知らなかった自分が悔しかった。
そして何より我が子の成長を最後まで見届けられなかったのが心残りだった…
 
 
「許してくれ…セレン……こんな父さんを……許してくれ……」
父さんは俺の傍で泣き崩れていた。
「……………」
俺はしばらく何も言えずただ事実を受け入れるのに精いっぱいだった。
「父さん……泣かないで……今こうやってまた会えてるじゃん…」
自分のキャラに似あわない様な言い方だけど、元気を出してあげたかった。
「…セレン……お前は……優しいな……」
「父さんこそ……」
「はは…そうか……でも、皮肉というか……こんな所で会えるなんて…」
「……でも…俺は父さんに会いたかった…会えるだけで良かった…」
「…セレン…」
「もう過去の事なんか忘れようよ……」
「……すまん…ありがとう……セレン……最後にしような…もうこれで泣くのは…」
「…うん……」
 
 
 
親子との再会。それはお互いが生きていなければ出来ない事。
どちらも欠けてはいけないし、欠けたら即ちそれは永遠の別れの意味を指す。
普段は意識しない繋がりでもあり、最も身近な繋がりでもある。
その事に気付いた時、初めて親子というものはお互いを信頼し合える存在になるのではないだろうか。
 
 
 
「セレン…腹空いたろ…これでも食べて、明日からまた頑張ろうな。」
「うん…ありがとう。」
昼からずっと食べてなったから腹は空きまくりだ。もの凄く美味く感じた。
夢中に食べたせいかあっという間に食べ終わった。
 
「じゃあ…私は元の部署に戻るよ……。」
「今日はありがとう……父さん。ちゃんと話せてよかった…。」
「そうか……」
 
そう言うとリレイドさんは部屋から出ていった。
ドアが閉まったあと、静かになった空間で俺はしばらく無言でいたが
疲れていたので部屋の電気を消して早く寝る事にした。
 
 
 
 
そして暗闇の中で自分の翼を見て、静かに泣いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
長かった1日が終わった―――――――。