Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第12話 鬼隠し】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

「西エリアチーム、目標確認。」
「同じく東エリアチーム、目標確認」
「了解。こちらカントー本拠地。レーダーで両編隊確認。両チーム接触まであと5km。接触後、演習戦開始。」
 
『了解。』
 
無数の黒い影が徐々にこちらへ接近してくる。それは最初遅いように見えてかなり速かった。
東エリアチームのポケモンはこちらの事をどう思っているんだろう。おそらく同じ気持ちなのかもしれない。
皆、無言になった。と、言うより『真剣』な顔しかなかった。
制限時間内に生き残る…これが自分達に課せられたミッションであった。
制限時間は1時間。まるで1時間の鬼ごっこみたいだ。しかし現実はそう甘く無かった。
 
「両チーム接触まであと2km。攻撃態勢を取れ。その後、演習戦に突入。制限は60分。頑張れ、幸運を祈る。」
 
カントー本拠地からの通信が消えた。そしてついに演習戦が始まった。両チーム接触
「西エリア!高度を低くしろォ!」
西エリアチームの誰かが叫んだ。一斉に西エリアチームは低高度姿勢になった。
『シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!ゴォオォォオォオォッ!!!』
直後にもの凄い勢いで東エリアチームが自分達の上空を通過した。凄い速さだ。
おそらくそのまま飛んでいたら木端微塵だっただろう。あの中に突っ込んでたらと思うと……
 
いや!今はそんな事考えるな!
 
自分に言い聞かせ、すぐに後ろを見る。はるか後ろでは東エリアチームが旋回してこちらへ来ようとしている。
西エリアチームも旋回して攻撃態勢に入る。ここからはほぼ個人戦だ。
僅かながら西エリアの方が旋回は早かった。すぐに東エリアチームのFlexには
西エリアチームにマークされた表示が点灯する。自分もあるポケモンにマークした。
しかし、3秒もしない内にすぐ解除されてしまった。
既にマークしたポケモンは、はるか高高度の上空に飛んでいたのだった。
 
「…速い!」
 
そうこうしている内に、自分のFlexにも警告表示が出た。
『マークされました。マークされました。1、2……』
音声と同時にカウントが始まった。15秒以内に抜け出さないと撃たれた事になる。
 
「くッ!!」
蛇行飛行を開始、そしてフゴイド運動っぽい飛行をした。
『7、8…マークから外れました。マークから外れました。』
約8秒で抜け出した。焦った。
 
『マークされました。マークされました。1、2』
「!!」
 
またマークされた。すぐに急上昇した。5秒後にマークから外れた。
だんだんコツが分かってきた。
でも、かなり体力と瞬発力が必要だな…これ……ってまたかよ!!
油断も隙も無い。
外れたと思ったらすぐにマークされている。
 
…60分間これに耐えなければ…死………
 
実弾が無いとは分かっていながらもそんな恐怖に襲われていた。
怖かった。皆、平然としているようだけど内心、もの凄く怖いのかもしれない。
なのに何故戦う…?
 
生き残るためには戦うしかないから。
 
 
 
ちくしょう!!
 
 
夢中になって逃げまくって…
逃げまくって逃げまくって逃げまくって逃げまくって逃げまくって逃げまくって逃げまくって逃げまくって…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
逃げまくった。生き残るために。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
でも、ダメだった。あと3分で60分経つという時についに15秒以上マークされた。体力が持たなかった。
『撃墜されました。撃墜されました。撃墜されました…』
警告と共に自動音声が淡々と撃墜されたことを伝えている。だんだん目の前がぼやけていく。
 
「ふ……57分逃げ続けた鬼ごっこ…か……
 子供の遊びだったら夢中になってこのくらい簡単に逃げれるのにな………」
 
目の前が真っ暗になった。自分自身が落下していくのがハッキリと分かった。
耳元で風の音がする………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。
僕はほんの少し目を開けた。
もうろうとした意識の中…誰かの上にのせられて運ばれているのが分かる…
飛びながら運んでいる彼の顔をふと見たが、太陽の強い光で分からなかった。
彼は自分がほんの少し目を開けている事に気づいたらしくこちらを見た。そして彼は自分を見て呟いた。
 
 
 
「よくやったな………セレン……」
 
 
 
セレン…僕の名前だ…
 
 
 
「どうして僕の本当の名前を……」
 
 
 
 
ふと彼の顔が光に照らされた。
僕を運んでいた彼はリレイドさんだった。
 
まさか……リレイドって……
 
………もしかして……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…とうさ…ん……?」
 
 
 
 
 
 
 
その言葉を口にした瞬間、リレイドさんの目に光るものがうっすら見えた。
 
 
 
 
そして、リレイドさんは何か呟いた。
 
だがその前に、既に睡魔が容赦なく俺を襲っていた…
その時の言葉は全く覚えていない…あの時…何て言ったんだろう……
 
 
 
 
同じ声…?
 
 
 
 
 
 
リレイドさんの声……
 
 
 
 
 
度々脳裏に聞こえるあの声………………