Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第29話 囮】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

“F地区上空に出現した敵機3機は撃墜。目標は N-spot 2 を通り抜けて出現したものと推定。
 他の N-spot にも変化の兆候有り。本格的な戦闘になる可能性大。最大限の警戒をせよ―――”

FlexはF地区の敵機F-2出現直後から本格的な戦闘が近い事を勧告していた。
そのジョウトの最初の敵の標的となったのが自分達だったなんて予想にもしていなかった。

たった3機とは言え、超高高度からの敵の出現にジョウト情報部は切迫していた。
「N-spotの監視体制は万全だったはず…何故気付かなかった。」
「監視にあたっている部隊によると出現した敵機の上空高度があまりにも高く、確認が困難だった模様です。」
「戦闘時は一分一秒の報告の遅れが生死を分ける。もっと迅速に伝えるように部隊に通達。」
誤報の可能性も多くなりますが…」
「命がかかってるんだ。命が!」
「は、はい!」

“現在、F地区上空で発生した一連の戦闘による被害状況は不明。航空隊員2名が編隊を離脱した模様。”

ボイスレコーダーの解析結果は出たか?」
「出ました。解析によると、被害は航空隊に1名発生した模様。重傷の可能性有。現在、同隊員1名が搬送中。」
「被害を受けた隊員並びに搬送中の隊員コードは?」
「被害を受けたのはT-2458です。S-30が救護班の元へ搬送しているものと推測されます。」
「そのS-30との通信は?」
「それが…今彼女がコンタクトを取っているのですが…」


#2-3「Third Fly S-30, Third Fly S-30, JYOTO CONTROL. if possible squawk 2072 normal. 」
S-30「ザザ―…ザザ…“n十秒を…sます…ポーン”…“只今緊急降下中”…ザザ…“只今緊急降下中”……ブツッ…」

(緊急降下時に発せられる自動音声………)

#2-3「Third Fly S-30, Third Fly S-30, JYOTO CONTROL. Fly heading 090 rader vector to WAKABA. 」
S-30「ザ―ザザッ……ザザ――――“This is an emergency discend.”―ザザ―――…」
#2-3「Third Fly S-30, Third Fly S-30, This is JYOTO CONTROL. Please contact to #2-3. Contact to #2-3. 」
S-30「ザザ……ザ…“只今緊急降下中”…ザ――――…」

(…ジョウト航空管制からジョウト第3航空隊全隊員へ…)

#2-3「All station all station except Third Fly S-30 and contact JYOTO CONTROL. 
        Contact JYOTO CONTROL #2-3 change frequency #2-3 and keep silent until further adviced. 」

#2-3「All station all station this is JYOTO CONTROL. Change frequency #2-3. Is this calling stand by? 」

(…セレン…)


S-30「ザザ…S-3…JYOTO…“只今緊急降下中”…please…ブツッ…call…“只今緊急降下中”…ザザ…」
#2-3「! Third Fly S-30, Third Fly S-30, This is JYOTO CONTROL. if you read me ident, please. 」
S-30「Ah, JYOTO…Third Fly S-30 request from immediate e--…trouble request return back to JYOTO. 」
#2-3「All right. えー…これからは日本語で話して結構ですから」
S-30「ザ―…了解しました…ザザッ…」
#2-3「S-30, 詳細な被害状況を教えて下さい。」
S-30「ザ…プツッ…現ざ…T-245ザッ…本拠地に搬送…呼吸確認…意識不mブツッ…多量出血中…ザザ…」
#2-3「了解。T-2458を除く他の被害は?」
S-30「ザザ―“只今緊急降下中”―…あ…rませザ――…」
#2-3「了解。本拠地にて救護班を待機させます。到着まで通信は終了します。」
S-30「ザザ…りょうkザ―――…」
プッ
―― 状況終了 ――


「S-30より入電!現在、T-2458をジョウトへ搬送中。呼吸・多量出血を確認。重傷の可能性有り。」
「意識は?」
「不明です。確認出来ません。」
「了解。ジョウト総合補助救護員部隊に通達。ジョウト本拠地ゲート33にて救護班を待機させるように。」
「了解しました。」

状況は切迫していた。いつ次の敵が出現するかわからない状況だった。
しかし情報部はこの時、自分達の救護支援を最優先にしてくれていた事が後になって分かった。
闘っているのは自分だけじゃなかった。誰もが精一杯の“一生懸命”をやっていた。




「早く…ッ…ハァッ…早く…!彼を…助けてあげて下さい…!」
俺は何とかジョウト本拠地ゲート33まで辿り着いた。自分の体力が少なくなっていくのを感じた。
命がけで俺を守ってくれた彼は意識が戻らないまま、救護班によって急いで救護棟へ運ばれていった。

「…すみません……すみません……すみま…せん…く…っ…」

俺はゲートの前で崩れてただただ謝った。地面に向かって謝っているように思えてくる自分が悔しかった。
日差しが雲の間から差し込んだ。彼の血で染まった自分の背中を照らす。
彼の血は自分の翼までも赤く染めていた。如何に彼の身が重傷だったかを物語っている。
俺はしばらくその場から動けなかった。動いたらもう彼に顔向け出来ない気がした。


その時、上空を一瞬黒い影が通り過ぎて行った。


ヒュッ


数秒後、自分に向かって猛スピードで何かが近づく音がした。俺は反射的に敵機だと思いすぐ反応した。

「畜生!俺に何の恨みがあるんだよ!ふざけんのもいい加減にしろォオッ!!」


攻撃態勢を取り、攻撃しようとした瞬間、Flexからミライの声がした。
#2-3「セレン!撃たないで!」


「え?」

直後、その影は俺の前で急停止した。
#2-3「彼は敵じゃないわ」
S-30「じゃあポケモン…?」
#2-3「航空隊T部隊所属で全国を転々としている特派員…」
S-30「特派員?」

停止と共に、徐々にその影があらわになった。
#2-3「人間からはこう呼ばれているわ…宇宙から来たポケモン……」






デオキシス―――――――――――――――――





「初めまして。私の名前はシークといいます。以後お見知りおきを。」

これがシークとの最初の出会いだった。今思えば不思議な出会い方だったのかもしれない――――――――


「っはは、そうなんですか。私を敵と見間違えてしまったのですか、これは失礼しました。」
「いえ…こちらこそすみませんでした。よく確認もしないで敵扱いしてしまって…」
「いいんですよ。出撃中は常に危機感に気を配るのは当然です。お気になさらずに。」
「ありがとうございます…あの…デオキシスさん、ちょっと質問してもいいですか?」
「シークで結構ですよ。その方が呼びやすいでしょう。ちなみに私のコード名はS-99423です、セレンさん。」
「あ、どうも。ってあれ?どうして俺の名前を…」
「話は上の方から聞いていますよ。以前、最年少のSP部隊員がジョウトにいる事を耳にしていたので。」
「はぁ…そうなんですか。最年少なのは初めて知りました。」
「私自身、中央監査官という役職でしたので事務仕事でたまにS-30というコード名を見かける事がありました。」
「中央監査官?」
「はい、中央から派遣されている特派員のようなものです。各地方の基地機能の監視・チェックが主ですね。」
「じゃあ、事務仕事をチェックする機会も多いんですか?」
「そうですね。度々あなたのコード名が目に入るくらいですから、結構そういう機会は多いと思います。」
「…俺ってそんなに珍しいもんですかね?」
「えぇ、そりゃあ気にはなりますよ。…ですが、さすがに個人情報に触れるのはまずいと最初思いました。」
「まぁ確かに。」
「勿論その時は触れませんでした。ですが、私はどうしてもあなたの事が気がかりだったんです。」
「何故ですか?」
「リレイドさんの息子さんという理由もあったのですが、それよりもっと大きな理由があったんです…」
「何でしょう…」

「…ナオヤというトレーナーをご存じですね?」
「!」

「やはりご存じでしたか。私はずっと彼をよく知るポケモンを探していたんです。そしてセレンさんを見つけた。」
「何故ナオヤを?」
「彼は…洗脳されていながらも最後まで強く抵抗したトレーナーの一人だったんです。」
「ナオヤが…」
「驚きましたよ…輸送機のコクピットに体当りして輸送妨害を試みようとしたそうです。」
「初めて聞きました。そんな事があったんですか…」
「情報部長官から聞いたんです。…その後、彼はその場で取り押さえられたそうですが。」
「ナオヤも闘っていたんだな…」



「その後の彼ですが… !! ゥ! …っく…!…ぐっ!いっ…!!…く…痛っ…ッ!!…」
シークが突然、頭を抱え苦しむような声をあげた。

「だ、大丈夫ですか!?」
「ぐ…ぅぐ……っはぁ…はぁ……な、何でもありません…時々起きる頭痛です…」
「頭痛…?」
「…どうやら私は……はぁっ……色々ヤバいみたいなんですよ、セレンさん……」
「ヤバいって何が…?」
「近頃、誰かに狙われている気がしてなりません…まぁ役職柄、恨まれる事なんて日常茶飯事なんですがね…」
「シークさんを狙っているポケモンが軍にいるんですか?」
「しっ!…大きな声で言わないで下さい…Flexで他の隊員に聞こえてしまいます…」
「す、すみません…!」
「幸い今、セレンさんのFlexは通信しにくい状態になっていると思うので誰にも聞こえていないはずです。」
「どうして通信しにくい状態を…まさか…これもシークさんが?」
「いいえ、これは私ではありません。全くの偶然…と言いたいのですが、どうやらこれも…」
「…」
「“仕組まれたシナリオ”の可能性があります…現に私のFlexも通信が繋がりにくくなっていますし。」
「…変じゃないですか?だってさっきまで普通に連絡出来ていたのに、急にピタッと繋がらなくなるなんて。」
「仰る通り、確かに変です。…ですが…セレンさん。いいですか?一度しか言いません、よく聞いてください。」
「は、はい」
「この先、私はあなたの前に再び姿を現すでしょう…もしその時、この頭痛とFlexの通信障害が再び起きたら…」
「…」
「それが“仕組まれたシナリオ”の確かなる証拠です。いわゆる、フラグって奴ですね。」
「なるほど。」
「ただ、頭痛自体はずっと前からあった持病みたいなものなので正確には言えませんが…」
「そうなんですか…」

「ですがセレンさん、これだけは覚えておいてください。…敵は身近な場所に居ます…気を付けて下さい…」
「はい…肝に銘じておきます。」

「ところで、話は変わるのですが…」
「はい。」
「まだ正常な通信をしていた時に、私のFlexが情報部からセレンさん宛に伝言を預かっていたみたいです。」
「俺にですか?」
「確かセレンさんはその時、隊員の方を運んでいたと思うのですが、もうその時から繋がりにくかったでしょう。」
「はい、幾ら発信しても中々繋がらなくて…やっと繋がったと思ったら緊急時の英語仕様だったので驚いて…」
「あぁ、それは他の通信と識別しやすくするためです。英語仕様になる場合があるので、注意して下さいね。」
「そうだったんですか、今度から注意します。」
「で、それはそうと伝言メッセージをセレンさんのFlexに送っときますね。確認してください。」
「あ、はい。来ました。えっと内容は…」







『貴官には敵機を本航空主力部隊まで誘導してもらう。』
















そうか、それが答えか。