Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第10話 Insight】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

―― 定時連絡 ――
 
Notification :ジョウト本拠地
ジョウト本拠地からカントー本拠地へ通達。ジョウト航空隊、全部隊カントー方面へ移動中。誘導指示願う。」
 
Reception:カントー本拠地
「了解。シロガネ山麓付近にジョウト航空隊の編隊をレーダーで確認。次の定時連絡はこちらから行う。」
 
Notification :ジョウト本拠地
「了解。次の連絡はTASK1訓練終了予定時刻30分後に。」
 
Reception:カントー本拠地
「了解。」
 
―― 状況終了 ――
 
 
 
「………………」
 
午前9時。ジョウト航空隊情報部。いつもの様に彼女は定時連絡を済ませた。
彼女の名はミライ。情報無線技士資格2級を持ったジョウト航空隊のオペレーターだ。
情報処理能力に優れ、周囲からは一目置かれている。
 
 
「ミライ、このデータなんだけど…」
「何?忙しいんだけど。」
「そう言わずに見てくれよ。こんな計算結果が出たんだ。」
 
彼女に渡されたのは敵部隊の海上からの予想上陸地点をパーセンテージで算出したグラフだった。
 
「やっぱりアサギ付近は危ないと思うんだ。」
「何故そう思うの?」
「いや、だって海上に面している都市だし。それに都会だから敵にとって拠点にしやすい地点だろ?」
「どうかしら。」
「え?」
「もし私が敵ならタンバを先に攻略してそこを拠点にする。貸して。」
 
そう言うとミライはグラフに机の上にあった赤ペンでアサギシティのグラフに修正を加えた。
アサギシティは都会で普通に考えれば拠点にしやすいが、
逆に考えればそれだけポケモン達は防衛レベルを強化する。市街戦も発生する可能性が高い。
 
「タンバ上陸の可能性が40%に引き上げか…」
「敵はおそらくアサギの市街戦を避ける。敵は私たちの考えに反して攻略しやすいタンバを活動拠点にするわ。」
「そこから上空空爆…後にアサギなどに上陸って事だな。」
「そうね。」
「分かった。上層部と検討してくる。ありがとう。」
「そう。それじゃ。」
 
ミライは赤ペンを元の場所に戻した。ちなみに今話した彼は♂で年齢もミライより上だ。
彼女は上からも信頼されているまさに情報のエキスパートなのだ。
 
 
 
 
「それで…?ホウエン出身で第1陸上隊所属のアルフィーネさん?さっきから何、私の事を見てるの?」
(ギクッ)
アルフィーネは背中越しにミライを見ていた。しかし、ミライには既にお見通しだった。
 
「い、いや…なんとな~く…」
苦笑いで答える。幾ら年下とは言え、アルフィーネもミライには一目置いている。
「何も無ければこんな所に来るわけないでしょ。何?」
 
「あ、あの…さっき航空隊が飛び立つときに地上にいなかった?」
 
「……………」
「どうしてあの時地上にいたのかな~なんて…」
「……………」
「何で?」
「……………」
 
ミライは黙ったままアルフィーネを見つめる。その目は少し睨むような目つきだった。
 
「どうしてそんな事言うの?」
「え?」
「どうしてそんな事言うの?」
「どうしてって…」
「私が隊員、見送ったら悪いわけ?」
「違うわ。あなたもちゃんとした理由があるでしょ?地上に来た本当の理由が。」
「………………」
「あるんなら言って。少しでも貴方の力になりたいの。」
「………………」
 
 
「…新しいSP部隊の隊員を確認しに来たのね?S-30を。」
「………!」
本心を見抜かれたミライはさらに目つきが険しくなった。
 
 
「……って言う子よ。ちゃんと私が確認したわ、心配しないで。」
「…………」
「貴方と同じ17歳。しかもSP部隊入隊。強い決心を持った子だわ。」
「陸上隊のあなたに何が分かるの……」
「陸上隊だって同じだわ…痛いほど分かるんだから!」
「…………」
「とにかくそれが聞きたかっただけよ。ありがとう♪」
「……待って……」
「ん?」
 
「あなた…どうして……ホウエンからここに来たの?」
 
 
 
「聞きたい?」
アルフィーネは背中越しに答えた。
 
 
 
 
震えながら。
 
 
 
 
 
 
 
「いいわ……あなたには少し興味深いところがある……」
「そう?それじゃまたね♪」
 
そう言うとアルフィーネは情報部の部屋を出ていった。ミライはその背中をずっと見ていた。
 
 
「………A-204………サーナイトエスパーの使い手………………」
 
ミライはアルフィーネの情報を調べた。
ホウエン出身……としか書いていない……………」
 
あとは空白だった。何も書かれてなかったのだ。
 
「………………」
ミライは黙ったままアルフィーネの情報欄を閉じた。
 
 
 
 
 
時刻は航空隊のTASK1の訓練が始まる午前10時を指していた。