Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第15話 近く遠く】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

人間襲来まであと45日―――――――
 
訓練内容は、かなりレベルの高いものになってきた。
連日演習戦の繰り返しが続く中、ついに実弾を使うようになった。
でもまぁ実弾って言っても当たると死ぬ訳でもない。単にHPが減っていくだけのことだが。
それでもやはり当たると痛いし、下手したら血だって出る。大怪我もする。
だからレベルが高いポケモンは全てのポケモンと対等に戦うためにある程度の制限が設けられている。
俺のレベルはどちらかというとさほど高くない。確かに父さんの方が強いのは確かだ。
でも誰だって訓練すれば強くなる。それもそのはずだ。戦う度に自然に経験値も上がってしまうし。
努力値も何も皆、自然と強くなってしまうのが必然だった。それがもう当たり前の状況と化していた。
 
訓練の凄まじさは前に鮮明に言ったのでもう分かっているだろう。
あんなにリアルタイムで心境がころころ変わるなんて自分自身驚いている。
初日でのあの凄まじさは正直ショックの一言に尽きる。現実は甘く無い事を痛感させられた。
 
 
誰だって何かをやる初日ってのは緊張するもんだ。不安なのは自分だけじゃない。
でも少しの事で影響されやすいのが初日というものだ。一日が長く感じるのはそのせいなのかもしれない。
疲れのあまり、もう嫌だって思えてくる。逃げ出したい。何処か遠くに逃げたい。そう思えてくるのは当たり前だ。
誰だって辛い事から逃げたがるもの。辛い事の方が好きな奴なんてそれは単なる妄言に過ぎない。
でも…逃げて得る事は逃げずに得るものより大きなものなのだろうか。本当にそれでよかったのだろうか。
後悔は後からなら誰だって出来る。未来なんて誰も予測できない。だから後悔するのも当然の事。
先の事が分かってるなら後悔なんてしない。する必要もないし、その感情すら生まれてこない。

それでも後悔は嫌。そう思えるのは今を生きている証拠。
あなたがしっかりと今この瞬間を生きているという立派な証なんだ。それに気付いて初めて希望は見えてくる。
今この文章を書いている時代の私達には残念ながら『未来』というものを見る事は不可能だ。
例え見えたとしても100%の確信は持てない。そんな事を思いながら今を必死に生きるだけなのだ。
1秒1秒来るごとに未来から今になり、そして1秒1秒過ぎ去る度に今から過去へと変化していく。
常に物事は動いている。止まっている様に見えて確実に、そして着実に状況は変わっているのだ。
その状況をどう見るかはそれぞれの個人次第。同時に未来を決めるのもあなた自身だ。
変えるも変えないも自分次第。変えた方が良かったり変えない方が良かったりする場合もある。
様々な雑踏が絡み合う空間では少しの事で惑わされる。それに動じない強い心を持つ事が大切だ。
ぶっちゃけて言えばマイペースが一番単純に見えて実は一番強いのかもしれない。
だからどんな事にも動じないってのは凄い事なんだと思う。理屈なしに憧れる。
 
 
そんな風に誰だって一度はこんな事を思うとずっと思ってた。
 
 
 
 
 
それがこの世界の真実だと俺はずっと思っていた―――――――――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…M-177ですか?」
「はい…ミライさんについて詳しい方を探しているのですが…」
 
開戦まであと45日のこの日、俺は訓練が終わって事務部のポケモンにミライについて詳しい方を探していた。
 
「それはどのような方をお探しで?情報部の者や同僚など様々いますよ。」
「出来れば情報部以外で普段ミライさんとよく話している方にお聞き出来ればと思っているのですが。」
 
 
 
何故、情報部以外のポケモンなのか…それはオペレーターでは無い彼女の真の姿を知りたかったからだ。 
 
 
 
「分かりました。それでは結果が出ましたらまたお呼びしますのでまたお越し下さい。」
 
 
そう言うと担当のポケモンは情報センターへの入室ログや定期アンケートなどから普段からミライに接していると
思われるポケモンの推測を開始した。勿論プライバシーは厳重で簡単にビシッと特定するのは難しい。
 
しばらく外に出て風にでもあたろう…
そう思い僕はいつものようにエントランスからゲート50を通り、地上へと行った。
外はもうすっかり夜になっている。でも入隊を決意したあの日と比べて日は長くなっているのは確かだ。
ほんのわずかだが西の方角には夕焼けが見えていた。明日も晴れそうだ。
 
ふと上の空を見た。星が輝いていた。その無限の空の世界は何処までも続いている様に見えた…
人間もこんな空を見ているのだろうか……多分見ているはずだ。
 
それなのに…
 
それなのに……何故…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
“……あなたは……とても大切な任務を背負わされているわ………”
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どう言う意味だ…?
 
 
「ピーッピーッ」
身に着けていたFlexから自動音声が流れた。情報欄にはこう表示されていた。
 
 
 
Notification :ジョウト本拠地 事務部
「結果が出ました。事務部へお越し下さい。」
 
 
 
もう結果が出たのか…早いな…
すぐに事務部の部署へと戻る。
 
「結果が出ました。様々なデータ解析の結果、情報部外で最も彼女に近いポケモンはA-204だと思われます。」
 
 
 
 
え……?
 
 
 
 
 
 
「も、もう一回言って下さい」
 
「はい、A-204です」
 
 
 
 
 
 
 
 
……
 
 
 
……アルフィーネ…さん……?