Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第27話 爆音】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

#4-1「ザザ―…S-99423応答せよ、こちらシンオウ情報部。S-994…ザザ――…こちらシンオウ情報…」
S-99423「こちらS-99423、シンオウ情報部どうぞ。」
#4-1「目標は?」
S-99423「破壊しました。」
#4-1「了解、貴官に次の指示を出す。ジョウト地方へ向かうように。そこで待機。」
S-99423「ジョウト地方?」
#4-1「貴官にはこれまで通り各地方で敵の早期発見役を務めてもらう。まずはジョウトへ向かえ。」
S-99423「何故ジョウトなんですか?」
#4-1「ジョウトを基点に監視活動を展開するためだ。その方が短時間で多くの地方へ行ける。」
S-99423「了解しました。ジョウト到着後、これまで通り監視業務を続けます。」
#4-1「以上だ、武運を祈る。」
プッ
―― 状況終了 ――
 
 
シークは一路、ジョウト地方へと向かった。
一方、その頃。ジョウト本拠地情報部では隊員達が沈みゆく敵船が映し出されたモニターに見入っていた。
 
「……………」
 
でも皆、発する言葉は一切無かった。モニター越しに見える上空に登る黒煙。
音も無いのに凄まじい轟音が聞こえてくるようだった。そして、それを沈めたポケモンの心情を考えると…
とても言葉なんて出なかった。出してはいけない気がした。雰囲気がそうさせていた。
しかし、そのシラけた空間を引き裂くようにミライが見入っていた隊員達にFlexで指示を出した。
 
#2-1「…各隊員は所定の任務に戻って下さい。急いで急いで!」
「!」
 
いきなり♀ポケモンの指示だったせいか、皆一気にハッと我に返って所定の任務へと急いで戻る。
特に♂ポケモン達は、かなりミライの声に驚かされた。自分も含めて。やっぱり♀の力は強力だ。
本拠地に残っていた陸上隊、航空隊は数分で一気に戦闘態勢を築き上げる。
 
「現在、海上隊は全部隊出撃し、ジョウト地方の海を部隊別に敵の出現に備え各地で待機しています。」
「陸上隊、航空隊も先陣部隊がジョウト地方の各街に分散して待機させています。」
「本拠地に残る陸上隊は?」
「A地区防衛全隊とB地区防衛大隊、それと総合補助救護員と総合予備隊です。」
「航空隊の方は?」
「S部隊、T部隊、SP部隊のA、B、C地区上空担当部隊です。」
「了解、これから各部隊に指示を出す。部隊事にFlexに指示を送るので各隊員は確認せよ。」
 
ピピッ、ピピッ、ピピッ…シュンッシュンッシュンッ
次々に各隊員のFlexに表示される。自分のFlexには次のように表示された。
 
 
 
 
ジョウト第3航空隊SP部隊所属】 Infomation to S-30
『F地区の上空偵察並びに海上隊の補佐。戦闘時は通常戦闘で行う。』
 
 
 
 
「F地区って言えば“N-spot 2”の近くかじゃないか。」
海上が多いエリアか…」
 
ジョウト地方には“N-spot”は5つ存在する。その内“N-spot 2”はF地区と呼ばれる海上に存在する。
第3航空隊SP部隊は、そこに派遣される形となる。海上隊の護衛役という役割もあるから大切だ。
 
「それでは武運を祈る、各隊出撃せよ。」
「了解!」
 
これが初の出撃となった。もうこれは訓練では無い…訓練じゃないんだ。
実際に起きてる現実。その現実に自分達は自らの力で立ち向かってゆく。
まだ見えぬ敵に立ち向かうという今の状況…何が起きるか全く分からない未来…全てこれも偶然なのだろうか。
それともあの無人船の音声が言っていた事が真実だとしたら、全て必然なものなのだろうか。
造られしもの―――――――――――― …
今まで全て刻まれた記憶は所詮、造られたものの“余計なもの”なのだろうか…
いや!今はそんな事考えるな!考えたら負けだ……
 
信じ込んだら、負けだ。
 
 
 
 
F地区上空に差し掛かる。
 
「黄砂で視界が見えにくいな」
「まもなく“N-spot 2”付近です。」
「各隊員は上空待機。滑空しながら旋回。」
「了解。」
 
滑空しながら旋回行動に移る。滑空しているので羽ばたく回数は少ない。体力消費もほんの僅かだ。
一番効率がいい待機態勢。おまけに適度に風も吹いている。と、いうか上空は大抵常に風が吹いている。
だからこそ、この態勢はもうお手の物だった。ただ油断しているわけでは無い。
大きく旋回する事で各隊員が360度全ての角度を常時見張っている状態を作り出す。そういう意味もあった。
下では海上部隊が待機している様子がうかがえる。視界は悪かったが、体制は完璧だった。
 
そう、全て…順調だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ピーッ ピーッ ピーッ
 
「……」
 
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
 
「…!」
それを見た時、周りの音が一切消えた感覚になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジョウト第3航空隊SP部隊所属】 Infomation to S-30
『F地区上空に敵機、数機確認。接触まであと8秒。』
 
 
 
ォォォ――ォォォ――― …
 
 
フェードインの様に一気に、その音は聞こえてきた。
「高高度上空、爆音――――ッ!!」
 
隊員の一名が叫んだ。それと同時にFlexに叫ぶかのようにミライの声が聞こえた。
 
 
#2-3「F地区上空にいる航空隊!拡散!早く…!!早く!!!」
ォォォ――ォォォオ――― …
 
 
 
凄まじい勢いで爆音が近付いてきた。