Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第28話 敵、現る】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

ォォォ――ォォォ―――…ヒュォォオ―――――――
 
凄まじい勢いで爆音が近付いてきた。
#2-3「 (セレン、逃げて!!) 」
 
「!」
 
ミライの声が聞こえた。テレパシーだった。
「拡散―――――ッ!!」
その場にいた航空隊員は一気に散り散りになった。
その直後、猛烈な轟音が目の前を影と共に猛スピードで通過した。
ゴオオオ――――ッ!!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ドドォォオオッ!…
 
「くっ!」
「速い!」
 
敵機は3機。しかし、全て尋常じゃないスピードだった。
まるでよけなかったら自分達に突っ込んでくるような…そんなスピードだった。
気が付かなければ木端微塵だった。体もろとも…って考えんじゃねぇ!俺の馬鹿!!
今は集中しろ!集中!
 
Flexの追跡機能を作動させろ――ッ!敵のスピード尋常じゃないぞ!!」
“ピピッ、作動確認。追跡ナビゲートモードに切り替わります。敵機確認。敵機数3、推定速度1150km/h。”
 
「そんな嘘だろ…!?あいつら音速を超えてるっていうのか!?」
信じられなかった…とても信じられなかった…今まで見たことの無い数字だった。
「全敵機、下から来るぞ――ッ!」
「!」
再び下から刺すように3機が真上に向かって突きぬけてきた。
ゴオオオ――――ッ!!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ドドォォオオッ!…
 
“目標機種確認、「F-2」。”
 
「あれが…F-2…!!?」
「おい嘘だろ…あれ航空自衛隊の戦闘機じゃないのか!?ほら、あの赤い丸印!」
「!」
 
敵機の翼には大きく赤い丸印が描かれてあった。そう、日本国の証だった。
 
 
「そんな…自衛隊が…そんな事をするはずが………」
 
 
…ダァンッ…!
 
 
「撃った――!撃ったぞ―――!応戦しろ――――――ッ!!」
「了解ー!」
反撃開始。もうここからは甘えは一切無かった。
 
“マークされました。マークされました。ロックオンされています。”
「くそ!いきなりかよ!」
俺は全力で振り切った。
 
“マーク解除。マーク解じょ…マークされました。マークされました。”
「くそ…!ふざけんな!!」
 
 
その時、後ろから援護射撃があった。その射撃は幸運にも敵機の急所を直撃した。
 
ダダダダダダダ゙ッ!シュン――シュン――シュン―――シュン――――――― ………
ガッ…ガンッ…バンッ!
 
 
「1機被弾したぞ!とどめ刺せェ―――!!」
「落ちろォォオオオオオオッッ!!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…ドッ…ドンッ……ドンッ!バンッ!!キイイィィ――――……
 
「1機、撃墜―――!」
その時だった。撃墜した彼に向かってもう一機が、すぐそこまで迫ってきた。俺はとっさに叫んだ。
「危ない!」
「ッ!」
ダン!ダン!ダン!ダン!!ザンッ…!!
 
「イッ!!ガ…グァッ!!アアアアアアッ!!」
間にあわなかった…俺はこの時になって初めて、このポケモンに命を救われた事に気付いた。
それなのに…それなのに…間にあわなかった…救えなかった…。
被弾した彼は精一杯叫んだ。
 
被弾、被弾。身体損傷。警戒!
「くそォォオオォオオオオオオッ!!!被弾した―――ッ!!!!」
 
俺は自分を心の底から恥じた。そして彼を援護するよう叫んだ。
「くそっ俺の馬鹿…!俺が未熟だからこんな事に…! を援護しろ――ッ!死なせるな――――!
「よし来た!」
「まかせろッ!」
「死なせるかよ!」
「死ぬんじゃねーぞ!」
「俺も加勢する!」
 
シュン!シュン!シュン!バババババババ!シュン!シュン!シュン!…
 
俺の呼び掛けに一気に5名の隊員が反応し、俺と被弾した彼の周りを取り囲むように援護する。
ダダダダ…
「君!名前は!」
「セレンです!!」
「わかった!ここは俺達に任せろ!セレン、最後まで彼を守りきるんだ!死なすな!」
「は…はい…っ!」
5名の隊員達は4方向と上下方向を完全に射撃カバーしていて完璧な連携プレーだった。
皆、お互いほぼ初めて顔を合わせるメンツだった。でも、皆まるでずっと一緒にいるみたいな感じだった…
 
 
ダダダダ…
 
遠くで射撃音と隊員達の声が響き渡る。
 
「2機目、撃墜―――!」
「あと1機だ!気ィ抜くな!!」
「はい!」
 
ダダダダ…
 
 
 
そんな時でも泣きたくなるくらい自分の周りにいる5名の隊員は、この援護を必死に行っていた。
もう感謝どころの話じゃなかった……俺は半分涙ぐんでいた。
 
「…ありがとう…」
被弾した彼が俺の肩の上で朦朧とした意識の中、言葉を口にした。
「……何も言わないで下さい…俺は最低です…命を救ってくれたあなたを守れなかった…最低な奴です…」
「…セレン…くん………」
「何も言わないで下さい…ッ!僕はあなたに顔向け出来ません!会話する資格なんてありません…!」
パシッ
「!」
彼は俺の肩を力を込めて翼で叩いた。
「それはちが…う……俺は…誰も死なせたく…なかった…誰も…死なせないと思って…必死だった…」
「………」
「もし…ちょっとでも遅れていたら被弾していたのは…セレン君……君……だ…」
「うぅ…ぁ…」
「守ってくれて…ありがとう…気付いてくれて…ありがとう…助けてくれて……ありがとう………」
「うあぁぁ…」
「泣くなよ…セレン君……それじゃまるで俺が…グフッ!…し…死ぬみたいじゃん…か………」
「うぅっ…死なせません…!絶対に!!」
「フラグ……圧し折るんだろ……?」
「な、何でその言葉を……」
「陸上隊のエスパーさんに聞いたんだ……だからセレン君の事は…はぁっ…若干ながら知っていた……」
 
アルフィーネさん…
 
「いい言葉じゃん…今まであった概念を…変えるっていうの…?俺…そういうの好きだな……」
「……うくっ…」
「えぇな…常識に捕らわれないって……セレン君……俺…こういう時になって幸せだなって思えてくるんだ…」
「…えぇ…?」
「だってさ……こんなにも皆から……大切に……されt………」
「……え………」
 
「……………――――――」
 
「嘘でしょ…起きて下さいよ……ねぇ……起きて下さいって……」
 
「―――――――――――」
 
「そんな…嘘でしょ……起きて下さい…起きて下さいよ……嫌だ…死なないでよ…嘘だ…嘘だぁぁあッ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 














 
 
 
 
「馬鹿やろォ…簡単に死ねるか…」
 
「うぉあっ!!!」
「はは…なんだよ…その反応…セレン…らしくないぞ……」
「お、脅かさないで下さいよ!本当だと思ったんですから!…」
「悪ィ悪ィ……たが…眠いのは事実だ……セレン君…少し休ませてくれ…………――――――」
 
……
 
 
 
 
 
 
 
 
…バギャァァッ!!イィィィ―――― ……
3機目、撃墜!全機撃墜ッ!!」
「っしゃぁぁあああ!!!」
「よっしゃぁあ!」
「勝った…!勝った…!勝ったぞおおお!!!」
 
“目標は全て撃墜されました。目標は全て撃墜されました。” 
Flexがただ一方的に状況を知らせている。
 
「それより被弾したのは大丈夫か!?」
「そうだ!大丈夫か!?」
 
皆が俺の元へ群がった。俺はただ黙ったまま俯いた。
「……………」
 
俺の背中の上には、血まみれになった彼の寝姿があった。
彼は実に気持ち良さそうに寝ていた。穏やかな笑みを浮かべながら…
 
 
「……………ッ!」
 
 
「あ、おい。ちょっと!」
「どうした?セレン君…」
「何処行くんだ?」
「おい!待てよ!」
 
 
俺は黙って皆を押しのけ、彼を背負ったままジョウト本拠地へと飛び去った。