Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第30話 技術VS技術】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

シークは黙って俺を見ながら頭の中でこの状況について考えていた。


“何故だ…何故、奴らはセレンに対してこれ程まで死亡フラグを立てる?
 考えろ…こんな事して奴らに何のメリットがある……何か意味があるはずだ。考えろ…奴らの目的は何だ…”



「シークさん、もう時間です。また会えたら会いましょう、それでは。」
俺はそう言い残してN-spot 2へと再び、飛び立った。
「……死ぬなよ、セレン。」

これが “囮作戦” と呼ばれる戦いの始まりだった―――――――――――――






よう人間。楽しいか?
転んだ奴を嘲笑い上から見下す。最ッ高に気持ちいいんだってな?
「ざまぁ」ですか。転んだ奴の様を見て至福の愉悦ですか。そうですか。

じゃあ次はお前が転ぶ番だな。




ジョウト情報部。この知らせに情報部で一際動揺してるポケモンがいた。ミライだった。
いつも感情を中々現さないミライがこんなにも動揺したのは初めての事だった。

「どうしてですか!何故彼にそんな大役を…!」
「上の命令だ。敵の航空主力部隊を一気に撃ち落とす作戦だそうだ。」
「しかし彼はまだ…17歳なんですよ?」
「だから何だ?17歳だから危ないとでもいうのか?」
「いえ…で、でも…いきなりそんな急に……」
「心配するな。SP部隊の訓練量はお前が思ってるほどやわなもんじゃない。」
「え…」
「ミライ、お前はS-30に救われたんだろう?」
「……」
「今度はお前が救う番だ。」
「…私が…」
「同じ17歳のお前なら彼も安心する。信じろ、彼を。」
「はい…」
「返事!」
「はい…っ!」

#2-3「S-30!聞こえ…ますか?…」
S-30「はい! って、ミライ…どうしたんだ?声が…」
#2-3「大丈夫…大丈夫だから…」
S-30「大丈夫ってお前…」
#2-3「…今から指示を出します。一度だけ言います、復唱の必要はありません。」
S-30「…分かった。」
いつもの冷静なミライに戻った。


㊙【作戦】 - N-spot 2 集中攻撃作戦(仮) -
N-spot2 付近の高高度上空にて敵出現に備え、第3航空隊を始めとする各隊員は高高度上空で待機。
もし敵が現れた場合、S-30が敵機を本航空主力部隊が待機する地点まで誘導。
短時間で集中攻撃を実施する。


N-spot 2 高高度上空。

「セレンが囮?」
「ハヤテ、全力でセレンをフォローしろ。お前はセレンのパートナーだ。」
「分かってます。しかし、隊長…いいんですか?このままだと……」
「確かに私はセレンの父親だ。でも今は第3航空SP部隊の隊長なんだ。それはあいつも分かっている。」
「ですが…」
「何も言うなハヤテ。今は勝つ、それだけだ。敵のお遊びも本格化し始めた。盛大な暇つぶしがな。」
「くそっ…!」
「ハヤテ、あいつを護ってくれ…命令だ。」
「まかせて下さい。息子さんは俺が護ります。では、また」

先輩は俺を支援するため、常に高高度上空で俺をマークするように飛行し始めた。

H-152「セーレンくんっ、聞ーこえるかーい?」
S-30「あ、先輩。何か久しぶりに話しますね。」
H-152「いやぁ最近出番少なくってさぁ。セレン君ちょっと作者に文句言ってよ。」
S-30「先輩、“そもそも話自体あんまり進まない”って作者が嘆いてましたよ。」
H-152「おぉやっぱりそうだったのか。いや、なーんか進行状況遅いなぁって思ってたところよ。」
S-30「作者もなんやかんやで戦争状態みたいらしいっすよ。」
H-152「受験戦争かってやかましいわ。いやでも、進行状況早いと逆に死亡フラグ増えるくね?」
S-30「今自分もそれ思ってたところっす。ただでさえ死亡フラグ臭がホイホイする話なのに。」
H-152「まぁ全ては作者次第って事だな。作者自体曖昧なんだけども…って…ん?」
S-30「…どうしました?」

H-152「来た!セレン!来たぞ!!敵だ!!」

直後、Flexの画面が真っ赤に染まり警告音が響いた。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!ピーッ!

ジョウト第3航空隊SP部隊所属】 Infomation to S-30
『N-spot 2に敵機、100機以上と推定。接触まであと23秒。』

ォォォ――ォォォ――― …

S-30「N-spot 2の歪み変化、大きくなりました!あと20秒で出現と推定!」
H-152「総員、戦闘用意――――!!」
先輩が第3航空隊全員に注意を喚起する。同時にミライの声が無線で聞こえた。
#2-3「F地区付近にいる航空隊全隊員に告ぐ!N-spot 2で敵機100機以上出現。速やかに戦闘行動に移れ!」

ォォォ――ォォォオ――― …

#2-3「繰り返す!N-spot 2で敵機100機以上出現!速やかに戦闘行動に移れ!到達まであと十数秒!」
接触まであと13秒。』 ゴォォォォオオオオオオオオオオ――――――― …
尋常じゃない数の爆音が近付いてきた。

H-152「気を付けろ!相手は音速並みで突っ込んでくるぞ!」
S-30「分かってる!ギリギリまで全機引き寄せる!後は集中攻撃…頼んます!」
H-152「任せろ!絶対に成功させる!!」
接触まであと4秒。』 ゴオオオオオオオオオオオオ―――― …
S-30「――!」
H-152「――!」


ドンッ















#2-3「到達…しました」




イメージ 1


ドォォオオ―――ッ !!!!!!!!!

“敵機確認。目標機種確認、「F-86A」。敵機数135、推定速度985km/h。”

F-86A
全幅:11.3 m
全長:11.4 m
全高:4.5 m
主翼面積:26.7 m²
最大離陸重量:6,300 kg
エンジン:J47-GE-27
推力:27.1 kN
最高速度:570 knot (1,105 km/h)
実用上昇限度:14,330 m
航続距離:1,026 nm
固定武装:12.7 mm M2機銃 6門
爆弾:最大 900 kg
乗員:1名



S-30「…ぐっ…っく……ッ!! ッ―――――――――!!」
#2-3「耐えて!耐えて!!」
S-30「―――――ッ!!」
H-152「いいぞ!その調子だ!数十秒だ!数十秒耐えろ!数十秒先には味方の主力部隊待機地点だ!!」
S-30「ひぐッ…!ぐッ……!!くっそ!…くっそ!追い付かれるクッソォォオオオオオ!!!」
R-37「諦めるな!急げ!急げ!急げッ!!!」
S-30「くッそッ…撃ってきやがった!!クッ!ミライィ!!まだかァ!!?」
#2-3「あと数秒…!数秒耐えて!!そのまま突っ切って!!!敵機は全機セレンに照準向けてる!!」
H-152「作戦通りだセレン!いいぞ!来いッ!そのまま突っ切れ!!!!逃げろ!!逃げろ!!!!」
S-30「ヴァァアァアア――――――――――ッ!!!!!!」


ポーン
“TARGET POINT 通過”


#2-3「攻撃開始!」

R-37「攻撃開始!急降下奇襲行けぇ―――!!!!」
ダダダダダダダ゙ッ!シュン――シュン――シュン―――シュン―――――――
シュン!シュン!シュン!バババババババ!シュン!シュン!シュン!
…バギャァァッ!!イィィィ――――……ドンッ!バンッ!!キイイィィ――――……

隊員達は敵機の後方から奇襲攻撃を仕掛けた。途端に上空はポケモン攻撃の弾幕の嵐となった。
かつてない猛攻撃が敵機を襲う。敵機が反撃し始めた時には既に敵機の数機は撃墜されていた。
後方からの奇襲を予測していなかった敵機は攻撃編隊を変更。四つぐらいの編隊に分かれて攻撃し始めた。
その内の一つの編隊がまるで俺を尾行するように攻撃してきた。その攻撃の仕方は殺すのが当然の様だった。
おそらく俺をこの作戦のキーポケモンと見たのだろう。彼らにとってみれば俺を殺さなければ気が済まない。

H-152「セレン!振り切れェェエエエ!!絶対に後ろ無くな!!逃げまくって逃げまくって逃げまくれ!!!」
S-30「くっそぉお!こっちくんなァァァ―――――――――!!!!!」
H-152「セレンばっかターゲット絞ってんじゃねぇ!!セレンには何の罪もねぇんだよ!!」

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…ドッ…ドンッ……ドンッ!バンッ!!キイイィィ――――……

S-30「くっそ!くっそ…!くっそ……!くっそ………!」
H-152「やめろォォオオ!!俺のパートナーなんだ!!やめろォォォォオオオオオオ!!!!!」

シュン!シュン!シュン!…バギャァァッ!!イィィィ―――…バンッ!!イィィィ――――…

S-30「先輩ィ!先輩ィィィイイイ!!!」
H-152「セレン!待ってろ!絶対助ける!!絶対に!!絶対に!!」

…ドンッ!バンッ!!キイイィィ――――………バンッ!!イイィィ――――…
バッ!バンッ!!キイイィィ――――………キィィィイイイイ!バンッ!!キイイィィ――――……





もう体力は限界だった。本当にあと数秒で撃たれていたかもしれない。本能的にそう察知した。
でも先輩は決して、俺に諦めないように全力で声を掛けた。文字通り、全力で俺を最後までフォローした。
俺の後ろに纏わりついていた敵機を確実に一機一機、落としていった……


先輩は…約束通り、
俺を…助けた。


そして俺は…
先輩に助けられた。



“目標は全て撃墜されました。目標は全て撃墜されました。” 
Flexがただ一方的に状況を知らせている。この光景をみるのは二回目だ。






敵は科学技術という大きな武器と支配権という圧倒的地位でポケモン達を圧倒した。
そしてポケモン達は科学技術では測れない予測不能の行動と秘かに確立してきたチーム連携で敵を圧倒した。


まさしく技術と技術がぶつかり合う戦いだった。
そして、意地と意地のぶつかり合いの戦いだった――――――――







H-152「…はぁ……はぁっ……はぁっ………はぁ…」
先輩はギリギリまで体力を使ったらしく、息切れが酷かった。
S-30「…はぁっ……はぁぁっ……はぁっ…グフッ……ゲフンッ……」
俺はそれ以上、体力を使ったらしい。

正直、あの“絶望鬼ごっこ”の耐性が出来てから身体の疲れ具合が変わっているんじゃないかと思う。

H-152「…へへ…護りきったぜ……」
S-30「…ふぁ…ふぁりがとう…ございまs…」
H-152「…疲れた……酷く疲れた……」
S-30「先輩…一旦、基地帰還の許可取ってみます……」
H-152「あぁ…頼む」
S-30「ミライ…応答してくれ……」
#2-3「――通信OFF――」
S-30「…つ……繋がらない……?」
H-152「俺も……繋がらん……多分他の回線使ってんだろう……」

ミライはしばらく応答出来ない時間帯が増えた。






そう。それは即ち、
敵の出現が多発し始めた何よりの証拠だった。







ジョウト情報部では緊急入電が錯綜していた。
敵はこの“囮作戦”を皮切りに本格的な戦闘を開始した。勿論、敵は全てN-spotから出現した。

「N-spot 1とN-spot 3にも敵機出現!!第二航空隊、第四航空隊、第五航空隊!戦闘用意!!!」
海上・海中でも危険度レベル4の歪みを観測!!本格的海中戦の恐れ大!厳重警戒せよ!!!」
「なんとしてもN-spotで敵を食い止めろ!!敵を足止めするんだ!!!」
「緊急…!緊急…!尋常じゃない数の…敵が……う…うぁあぁぁああぁあぁああぁ!!!!!!!!!」
「どうした!応答しろ!応答しろ!!!」
「ザザ――……敵が…!敵が来ます!!!な!?何だあれは!?わ!来る!来る!わあぁあ!!(ブツッ…」
「おい!おい!何があったんだ!おい!応答しろォ!!」
「N-spot 3の第4海上隊偵察部隊からの通信が切断されました!」
「同じくN-spot 3の第5海上隊の先発部隊からの通信が切断!」
「他方からの通信によると尋常じゃない規模の敵が海上から侵入している模様!」
「N-spot 2の海上に多数の船舶が出現!おそらく護衛艦相当の船舶と推定!」


ジョウト地方のN-spot付近に配置されている隊員の通信状況を示した地図がどんどん赤くなっていく。




ミライは、無線越しに起きている惨劇のあまりの多さに判断する思考をしばらく失った。
思考を失ったミライは、バグが起きたかのようにひたすら呟いた。



「カエレ」



「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」
「カエレ」





「カエレ」


そして思考を取り戻す直前、彼女は最後にこう呟いた。







































「やんだ あとで なかす」