Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第33話 赤潮】 SPECIAL ATTACK APPLICANT



人は他人を信じる事で生きていける。だが、他人を信じるのを嫌がる人もいる。
そのほんのちょっとした意識の違い、考えの違いで過ちは始まり、それは因縁と化していく。
やがて、過去の因縁を捨てられずに同じ過ちを繰り返す。
本当は誰も望んでいないはずなのに。何故、同じ事を繰り返す。

何故、お互いを憎む。
何故、お互いを殺す。
何故、無関係の者まで巻き込もうとする。

人間はいつからそんな生き物になった。






ジョウト地方、N-spot 2 海中。
日が差し込むか差し込まないかの水深30m付近。
黒く大きな物体が暗闇の中に浮かんでいる。物体は不気味な程大きく、動かず静止していた。
ソナー音が一定の間隔で海中に鳴り響く。




ゴボォ…

その物体を岩陰から見つめる視線は数千にも上る。彼らは動かないその物体をひたすら監視していた。
沈黙とソナーの音が、不気味な静寂を醸し出す。シンオウの時の睨み合いとは明らかに違う。
ここでは行動を起こしたら殺されるか殺す。そういう世界だ。

彼らもまた、その不条理な現実に巻き込まれている若者達――――――


「(ありゃー今度はこっちにフラグ立てちゃったみたいだよ?)」
「(エイル、聞いた?N-spot3の方…相当ヤバい事になってるらしいよ)」
「(そんなのもうとっくに知れ渡ってるよぉ。だから言ったでしょ?人間さんはやる事が違うって。)」
「(くく…ならその上を俺達はやればいい。面白くなってきたじゃねーか!ふはははっ!)」
「(お前…何を考えてる…?)」
「(ぷぷぷ相変わらず厨ニ臭い展開のオンパレードだね~さっすが男の子だにゃ。)」
「(まぁ撃たれりゃそれまでだけどな…)」
「(くく…関係ねえよ。運が良けりゃ死ぬし、悪けりゃ生き残るんだよ。)」
「(それ逆じゃね?)」
「(んー逆じゃないよぉ多分。ネオ君の言いたい事分かっちゃったかもー)」
「(くく…相変わらずエイルは物分かりが早いな…お前も見てたんだなあれを)」
「(えへへー♪)」
「(おいおい何だよ?それ)」
「(エイル、フォースに教えてやってくれ)」
「(わかった~フォース耳貸してー^^*)」
「(お、おぅ…///)」


“逆になってくるの…段々と”

「(え?)」



「(一足掻きする流れになりそうだな、めんどくせぇ。仕掛けるなら来いよ…人間!)」
「(ふふ、ネオ君の厨ニモード甞めたらあかんにゃー)」
「(エイル…)」
「(なぁに?)」
「(真剣に答えてほしい。本気でそうなるのか?)」
「(…………)」
「(頼む答えてくれ!)」
「(わっ分かんないよ…!私だってホントはすっごく…怖い…怖いよ!フォース…うっっ…ぁぁ…)」
「(ゴメン…怖がらせて済まなかった…)」
「(フォース、怖いのはエイルだけじゃない。俺も怖い。怖くて怖くてしょうがないんだっくそ!)」
「(ネオ…)」
「(みんな怖くて怖くてしょうがないんだよ…だからみんなキャラを作ってるの…自分を失わないように)」
「(エイル…)」
「(フォース、エイル、生き残れよ…)」
「(ネオ、お前もな…)」
「(みんな、生き残るって約束して…)」
「(エイル…駄目だそれは出来ない…)」
「(フォースぅ…!)」
「(…言っただろ?運が悪かったら生き残るって。)」
「(ネオ君…)」
「(安心しろ、俺達は造られし者さ。運が悪いに決まってやがる、だから約束なんていらない。)」
「(そうだよエイル。ネオの言う通りだ。大丈夫、俺達は何があってもエイルの仲間だ。)」
「(…ありがとう…)」



「(エイル、お前のある仲間は軍に召集される時、“皆を守りたい”って言葉を何度も口にしたそうだな。)」
「(うん…)」
「(そいつ今は何してる?)」
「(分からない…でもおそらく彼は今も叫び続けてる…私達と同じで。)」
「(名前は?)」

「(セレン…不思議な男の子だった。どうしてかな…たった3ヶ月なのにもう随分昔の頃のように思えるの…)」

「(そいつもお前と同じで色々変わってるんだと思う。勿論、俺もフォースも3ヶ月で色々変わったしな。)」
「(ネオ、お前の厨ニ発言はまるっきし変わってn)」
「(黙れ、フォースよ。)」
「(えー)」
「(でもね…セレン言ってた…“どうせ変わらないのなら最後まで足掻いてみよう”って。)」
「(ほう)」
「(“足掻けば偶然はやってくるかもしれない。”…そうなんだと思う。)」
「(確かに。結局は奇跡もやっぱり偶然の延長線上なわけだし、実際、僕らは偶然を待っているだけだしねホント。)」
「(フォースもたまには良いこと言うんだな。)」
「(よく言われます。)」
「(嘘つけ)」




「(…人間って…私達のこと同情したり…しないのかな…)」
「(それは無い。)」
「(絶対に無い。)」




「(そうだよね…人間だもん……人間だもんね……)」
「(奴らはただの自分の意思を一切持たない洗脳集団。人間界の人間が操作している操り人形さ、エイル。)」
「(言っとくが感情なんて無いからな。)」
「(うん…そうだったね。)」
「(あーもうこれじゃまるでロボットと戦ってるみたいやないですかー)」
「(ネオ、お前はどこの機動大戦を妄想しているんだ?)」
「(ア○ロ、行きまーす!)」
「(限りなくアウトに近い何かですね、分かります。)」
「(ところでさ…何で私達テレパシー状態で話せてるんだろ…)」
「(おぉ!エイルが作者にキツイ指摘をしたッ!)」
「(嬉しそうだなネオ。で、作者さん。何で?)」


作者「妄想し出したら止まらんようになったでござる。」


「(それにしてもこの作者、変態である。)」
「(それはお前にも当てはまるぞ、フォース。)」
「(黙れ変態!)」
「(いいのか?ホイホイ喋って?俺はノンケでも喰っry)」
「(あぁん!?ホイホイチャーハン!!?)」
「(はわわ…変態同士の視察戦…萌える…///)」
「(ほら見ろエイルがBLモードに入りやがった。)」
「(BLには興味無いよ?)」
「(お、エイルはNL派か。)」
「(ネオ、心配しなくてもエイルは普通の女の子さ。)」
「(なら安心だな。)」
「(萌える時点で普通じゃないけどね)」

「(さぁ冗談はこの位として…そろそろいくぞ…大海中戦のメンバーさんよォ!フォース!エイル!)」
「(あぁ、こっちは最高の絆で結ばれてんだ…最高の仲間だよ!ネオ!エイル!)」
「(えっへへ…カッコイイじゃん…私も男の子が良かったなぁ…ちくしょー私も混ぜろー!フォース!ネオ!)」







ゴボォ…




伊-206号艦内。





「ソナー結果出ました。この周辺でも軽く2千は潜んでいると推測されます。」
「最も近い敵までの距離は」
「約200mと見られます。いつ撃ってきてもおかしくありません。」
「だが奴らは撃ってこない。いや、撃つのを恐れている。」
「いくらポケモンと言えど、流石にこの機能には恐れるでしょうね。」
「自分の撃った攻撃が撃っただけ自分の元へ全く同じ角度で跳ね返ってくる。大したもんだ。」
「潜水艦だけでなく艦船には全てこの機能が付いている。人間世界じゃまるで絵に描いたような話ですね。」
「だがここは人間世界では無い。あえて言うなら作られた世界の中の延長線上とでも言うべきか。」
「しかし、ここまでリアルになるものなんでしょうか。とても数年放っておいただけでこうなるとは思えません。」
「だが事実だ。受け入れるしかない。」
「勿論、一気に消すことは可能。しかし、それには多大なリスクを背負うことになります。」
「そのリスクを極限まで無くす。言い方を変えれば隠蔽工作だ。まったく、地味な作業だよ。」
「こんな事をやらさられるなんて、ここに入った時には思いもしませんでしたよ。」
「えぇ、最初に聞いた時は“どうしてそうなった”って突っ込まずにはいられませんでした。」
「何処でバグが生じたんでしょうね。どれも問題は無かったはずですが。」
「いや、バグの問題では無い。そもそも計画が無謀過ぎた。リスクが大きすぎた。」
「想像を上回るスピードで一気に拡大してしまいましたからね…あれがリスクを一気に加速させた。」
「あのシステムを導入するのには時代が早すぎたんだ…早くともあと5年後に導入するべきだった。」
「しかし、今になってはそれも過去の話。我々は任務を遂行するだけだ。」
「そうですね、もうこの世界は私達にとって必要無いものなのですから。」
「あまりにも長すぎる任務です。いつまでこんな事をやらせられるんでしょうか。」
「数年後には自然に終わっていくだろう。もう二度とこんな仕事はしたくないがな。」
「そうですね。」





ソナーの音が止まった。







ピィーッ!

鷹の鳴き声のような音が一回響いた。



“N-spot3付近海上駆逐艦『あわじ』より報告。敵兵の殲滅、約300。海面が赤く染まっている。”



「合図だ。メインエンジン運転開始。これより海中に潜む敵部隊の殲滅を開始する。総員戦闘配置。」
「は!」
「総員、戦闘配置完了しました。エンジン出力安定。」
「攻撃開始10秒前。各員、照準用意。」
「照準ヨ――――――イ!」









ジョウト情報部。
ミライは変わり果てたN-spot3海中の様子が映し出されたモニターを無言で涙を流しながら見続けていた。



「N-spot2海中、敵の伊-206号潜水艦の砲台が動き出しました。まもなく戦闘開始と思われます。」
「…N-spot3の方は?」

「先発部隊、壊滅。」

「……その後は?」
「殺傷機械は中央を集中攻撃することで破壊が可能とのこと。死傷者の数も大きく減りました。」
「……」
「しかしながら、死傷者は既に500を超えています。」
「……」



「…敵は我々を本気で怒らせました。N-spot2第一次海中戦…必ず勝ちます。戦闘用意。」
「はい。」
「まず伊-206号からの砲撃は34.45スポットに当たります…直撃を避けて下さい。」
「了解しました。34.45スポット!戦闘員退避!」

「は!」











ミライが俯きながら笑みを浮かべて呟いた。


「勝ち組さん、見ててね。」






































「今そっちに行くから。」