Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第40話 同情-回想編③-】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

こ の そ う ち は あ る じ ぎ よ う を 終 了 さ せ る た め に せ ん そ う も く て き で つ く ら れ た 。
が ん た ん に ぜ ん こ く じ ど う か い ざ ん 。 し が つ つ い た ち に 作 業 A を か い し す る。
せ ん そ う は ね ん ま つ ま で に お わ ら せ る 。 じ ぎ よ う は そ れ で か ん せ い す る 。


「なんだそれ…」
「おそらく “じ ぎ よ う” は “事業” のことだと思います。」
「事業って今、俺がやっている作業の事か…?」
「私の推測ではそういう事になります。証拠として、当時の資料を保存しようとしたらロックがかかっていて…」
「出来なかったのか。」
「はい。スクリーンショットのメニュー欄も無効化されていて、PCのスクリーンショットもブロックされました。
「…冗談だろ?」
「冗談じゃありません…私、悔しくて…荒技ですが携帯端末で画面を写真に収めようとしたんです。そしたら…」
「そしたら?」
「急に画面がブルースクリーンになって、PCの電源が落ちたんです。」
「…意地でも証拠を残させないつもりか。」
「急いで再起動して、元の画面に復旧させようと元のページにアクセスしたんです。でもその時にはもう…」
「資料ごと消えていた…と。」
「信じられないですよね…こんな事。本当の事なのに、まるで映画を見ている様で…」
「学研の人間が気付いたのかもしれんな。確かにとても信じられないが。」
「それで気になって…とにかくHBD-5000について、片っ端から調べたんです。危険なのは分かっていました。」
「よくやる気になったな…恐れを知らないとは正に、この事か。」
「探偵意欲が剥き出しになったんでしょうね。私の悪い癖です。おかげで…とんでもない結論になりましたよ。」
「教えてくれるか…その結論…」




「条件があります。この事は、この世界の人間には誰にも言ってはいけない。いいですね?」
「この世界の人間?」
「話したら分かると思います…いいですね?貴方は会社の裏を知ってしまう事になります。」



俺は息を呑んだ。
思い切って俺は楓に向かって、こう言った。


「いい…俺はもうこんな今の荒廃した人間の生活には飽きてた頃だ。せめて自分位はまともな人間でいたい。」






すると、彼女は手に持っていたゲーム機の電源をOFFにして、顔を上げてこう言った。

「やっぱり、あなたも私と同じなんですね。」



「同じ?」
「洋佑さんの気持ち…何故か痛いくらい伝わるんですよ。きっと普段、私と同じ環境で生活してるんでしょうね。」
「不思議なもんだな…今日まで知らなかった赤の他人に、これほどまで同情されるとは思いもしなかった。」
「もし、貴方に少しでも人間としての良心があるなら聞いてほしい話です。」

「それが会社を裏切ることになろうと…か……そっか、やっと分かったよ。」
「?」
「君だろう?一年前のあの日、俺を操作したのは。」
「……知っていたんですか。」
「いや、何となくそんな気がしただけだ。でもハッキリ言って、あの日の記憶は全くない。」
「すみませんでした…あれはHBD-5000の技術を私が勝手に引用して作った機械の実験だったんです…」
「本当に凄いなお前は。何でも出来るじゃないか…俺がその装置の実験第一号ってわけか。」
「犠牲者が出ないように極限まで抑えたつもりです…洋佑さんへの被害も最小限に抑えたつもりです…」
「現に犠牲者は一人も出ていない事になっている。俺への被害もほとんど無かったな。実験は成功だ。」
「ホントですか?」
「ただ、謎が多過ぎる。記憶が無いはずなのに身体の至る所が痛いし、頭はボーッとするし。ありゃ何なんだ?」
「あえて言うなら…洋佑さんの真意を具現化したものとでも言っておきましょうか。」
「…なかなか意味深な事を言うんだな。俺があの時、どんな姿をしていたのかお前は知っているのか…」


楓は俺の目を見ながら、黙って頷いた。


「…どんな姿だったか教えてくれないか?」
「条件があります。もし言ったらこの事は、この世界の人間には誰にも言ってはいけません。」
「やれやれ…またか。どうやら俺は、相当ヤバそうな事を知ってしまいそうだな。」
「後戻りするなら今のうちです。後戻りするなら、私と会った記憶も消します。」

「それはそれで、ちょっと寂しいなぁ。」
「そ、それはどうも…///」

「(って、これじゃ俺はただの出会い厨じゃねーか…汗)」


「でも、真面目な話なんです。少なからず、あなたの日常に干渉してしまうのは確実なんですから。」
「日常?俺はもうこんな今の荒廃した人間の生活には飽き飽きしている。日常の方が酷すら感じる。
「それでも日常は大切な存在です。無くしたら取り戻すのは大変なのも洋佑さんなら分かっているはずです。」



俺は、今まで溜めていた本音を吐き出すように言った。

「それが“良心を持ってる人間を踏み躙って不条理の上に立つような生き方をする日常であっても”か?」




楓は、俯いて微笑みながら言った。

「根気十分…いいですねぇ、その覚悟。惚れぼれしちゃいますよ。」



「荒廃しすぎて見過ごされる事実があまりにも多過ぎるんだよ…この世界は。」
「いわゆる“隠蔽”という奴ですね。言ってはいけない事が、“真実”。これも全てはご都合主義。」
「“正直者は馬鹿を見る”――― 良い奴に限って、痛い目に合っている…俺は今まで何度もその光景を見た。
「私は気に入りませんよ…落とす時は徹底的に、二度と立ち直れないくらいに落とす、この現実のやり方が。」

「それより俺がもっと気に入らないのは…“良心のある人間を踏み台にして上に昇る卑怯者がいる”って事だ。」
「“卑怯”という言葉は負け組が使う言葉?いつ誰がそう決めたんですか?って事すら、言ったら負けですか…








しばらく、沈黙が続いた後、楓が震えるように呟いた。











“ それでも…私達は……間違っているんでしょうか…… ”


















俺はその問いに、語りかけるように答えた。



“間違ってなんていないさ。
 同じ状況に置かれている人間は、きっと俺達と同じ様に苦しんでいる。
 ただ、誰も声にしないんだ。いや…声に出来ないだけ。それだけなんだよ ―――――――――― ”







彼女は再び、顔を上げた。


そして…






目に涙を浮かべながら、ゆっくりと俺に微笑み、口を開いた。



「それじゃあ…教えますね…♪




























これがあの戦争の運命を変えるきっかけになるとは、この時は思ってもいなかった。