Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第60話 悲壮!決別の無線】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

ジョウト地方では開戦後、迫り来る脅威を足止めする最後の拠点として3つの防衛ラインを定めていた。

ジョウト本拠地からそれぞれ、
100kmの地点を結んだ線を『一次防衛ライン』
70kmの地点を結んだ線を『二次防衛ライン』
30kmの地点を結んだ線を『最終防衛ライン』としていた――――



11月23日。
3週間ぶりに侵攻を再開した敵部隊は以前にも増して、強力な部隊を編制し
『一次防衛ライン』に到達する…

遂にシナリオは、最終章の中核に入る。


シュルル…バガァアン!!

「敵の数が多すぎます!」
「我が隊で残存する兵は何名だ!」
「分かりませェん!」
「目視で確認できるのは5名です!」

「…………撤退だ」

「え?」
「撤退だ…このままじゃ壊滅だ…」
「しかし一次防衛ラインが!」
「死にたいのか!?」
「…死にたくないに決まってんだろ」
「なら今は撤退するしか無い!」

「……撤退してどうするんだ」

「なに…」

「撤退しても同じだ。この防衛ラインはいずれ突破される。だったらなァ!
 逃げる講釈並べる暇があったら少しでも敵を足止めした方がよっぽどマシだろうが!!」

「……くっ」
「生きたいから戦うんだろ!!」
「くそ、その通りじゃねぇか…!」





「…大丈夫だ、あいつらがいる」
「…SP隊か」
「一名でも“到達”すれば…」
「あぁ、俺達の“勝利”だ」
「そのためなら犠牲は覚悟の上」
「年末まで世界が存続するなら…」
「それだけでいい。行くぞッ!」
「「ハッ!」」


シュルル…バガァアン!!

1日で陥落すると言われた、一次防衛ラインは実際には5日も存続した。







11月28日。
『一次防衛ライン』陥落。
敵は本拠地まで100kmまでに迫る。
日に日に領地は狭くなっていき、叫びも虚しく確実に追い詰められていく…
何もかもが剥ぎ取られ、生きる事すら否定されるような…
果ての無い絶望しか、もうここには漂っていない。


その日の夜。
夢の中で、またあの声が聞こえた。
謎の白い女性の声。

何処かは分からない夜の都会…規模の大きさからして人間世界の都会であることは分かる。
しかし、その街は都会なのに灯りも人も車も動く物は一切無い。
暗闇に包まれ、何もかもが静止した街の中をゆっくりと歩いていた彼女は、
スクランブル交差点の真ん中で足を止め星空を見上げた。
顔や肌、髪も含め全身が白色。彼女を纏う白いタイツのような服には
マリンブルーの流線型ラインが鮮やかにデザインされ、光を帯びて煌々と輝いている。
顔は前髪で隠れていて相変わらず分からない。

白く長い髪を風にゆったりと靡かせながら、彼女は呟く。






もし私が面接官なら…
この世界は不採用にするだろう。

どうして、こんなに
世界は無情で残酷なんだろう。

どうして、こんなに
苦しまなきゃいけないんだろう。

どうして、こんなに
否定されなきゃいけないんだろう。

どうして、命すら
奪われなきゃいけないんだろう。

生きたいと思う命を、どうして
同じ命を持った者が潰すんだろう。




『綺麗事』『偽善』
こんな言葉を作ったのは誰なの?
何で本心を語ると全て叩かれるの?
…本当に酷いね。





普段見慣れているから気付かないと思いますが、
皆さんが人間と呼んでるその生き物は…









化け物ですよ。






夢を見るたびに聞こえる、傷口から血が滲み出るような悲痛な心の声…
彼女の声は俺以外には誰にも聞こえない。

いや、誰も聞こうともしない。

どんな綺麗事を並べても結果にならなけば誰も耳を傾けない、
そんな当たり前な『世の摂理』に抗う者を世界は「異端者」もしくは「無能者」と呼び、
陰湿な手段で世界はその存在を消していく。二度と復帰できないくらいに。

『世の摂理』は本当に意地悪だ。





夢が終わる直前、彼女の頬に一筋の涙が流れるのが微かに見えた…






ブーッ…ブーッ…

Flexのバイブレーションの音で目が覚める。定期的に送られる各部隊からの戦闘報告や各種連絡、
緊急じゃない連絡は全てメール形式でFlexに伝達されていた。

ブーッ…ブーッ…

しかし大半が広告メールのようなもので、実質役に立つのは僅かしかない。
それでもたまに重要な案件も来るので通知を切るわけにはいかなかった。

ブーッ…ブーッ…



「…朝からうっさいな」

開戦から日が経つに連れて、1日に来る数は膨大になっていった。
寝起きの度に数十件もチェックするのは既に朝の日課となっていた。
やはり大半が「はぁ…そうですか」程度の内容だ。


情報周知目的とは言え、この量は少し多すぎやしないか。




ミライに相談すれば、「就活生…みたい」

アルフィーネさんに相談すれば、SNSの爆撃通知よりはマシだよ!」

ブラスト君に相談すれば、「まぁ仕方ないですよねぇ」

ヴァン君に相談すれば、「メールうざすぎ^^」

エイルに相談すれば、「それには同意なのです」

ハヤテ先輩に相談すれば、「出会い系メールは来ないけどな!」

挙げ句の果てに父さんに相談すれば、「出社直後はこんなもんじゃない…」






…やたらメタい意見が集まってしまった。
うん、要は「一々気にするな」って事だ。気楽に流そうじゃないの。
そんなちょっとした下らない相談にも関わらず、
直ぐに答えてくれる周りの仲間達の優しさに感謝しつつ俺はまた、戦場の地へ飛び立った。 





しかし…戦場の地に赴けば通信は全て無線へ自動的に切り替わり、
メール通知には無い事態の深刻さが直に伝わる

戦闘での生々しいやり取りが、無線連絡では繰り広げられていた。






「緊急通達!こちら一次防衛ラインE-13派遣隊、
 東側からの敵の先発隊が本拠地方面に動きました!現在、残存するE派遣隊が応戦中!」

「1日でもいい!一次防衛ラインから先に敵を進めるなァ!」
「敵の支援部隊を裁ち切る事を一瞬たりとも忘れるな!それだけで大きく変わる!」
「敵大隊、一次防衛ラインに侵攻を開始!航空隊の増援を要請!」

航空隊関連の無線になれば、指示を出すミライの声が響き渡る。指示を出す早さはやはり流石だ。
以前のような完璧な予知能力で作戦を展開することは出来なくなっていたが、
それでも常に最善の指示を出そうとする強い姿勢に情報部だけでなく航空隊からも
彼女の航空隊メインオペレーター存続の声は強かった。


「出動要請、第1航空隊のS部隊17編制~25編制は一次防衛ライン東へ」
「了解―――」
「北、西、南方面の敵先発隊も動きました!いずれも本拠地方面に侵攻!」
「追加出動要請、第2航空隊のS部隊07編制~14編制は一次防衛ライン北へ出動せよ」
「了解―――」
「第2航空隊のS部隊15編制~20編制は一次防衛ライン西へ出動せよ」
「了解―――」
「第2航空隊のS部隊21編制~25編制は一次防衛ライン南へ出動せよ」
「了解―――」
「残存する航空隊は、これまで通り今後の指令があるまで各地で陸上隊の支援をせよ」


ちなみに航空隊員で飛行中であっても、周波数帯を少し変えれば付近の
陸上隊員達の無線を受信して聞く事が出来た。

だから陸上隊の様子は俺でも痛いくらい伝わった…







中でも訣別の無線は悲壮以外の何物でもなかった。

言うなれば遺言――――――――

訣別の文は皆それぞれ異なる。長いものもあれば、短いものもある。
けれど、これまで俺が聞いた中で最も悲壮だった訣別の無線は…

ノイズの中、一瞬だけ聞こえた名前も分からない女の子の声。
とても…とても短い無線だった。


ザ――――…ザザ…






「もう…疲れた」

ブツッ














































ブーッブーッ

ピッ

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「…」

ピッ






12月5日。
陸上部隊、二次防衛ラインに到達。