Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

【第61話 心理戦】 SPECIAL ATTACK APPLICANT

12月3日、ジョウト地方
敵の陸上部隊は、本拠地から70kmの地点を結んだ地点『二次防衛ライン』に到達した。
即ちそれは、ジョウト地方の領地は半径70kmの円形状にまで狭まった事を意味する。
しかし、ジョウトはこれ程までの犠牲がありながらも、まだマシな方だったという。

著しく事態が深刻なのはシンオウよりも新しい世代の地方で、
詳細な戦況は次第に伝わらなくなっていった。







ジョウト上層部。

カントー上層部から通達。例のN-Spot解析、ほぼ完了したとの情報が入りました!」
「結果は出たか?」
「此方が詳細になります」
カントーのこの地点にしか現れていない特殊な“常時出現型”N-Spot…」

「はい。これまでのケースは不規則に出現していましたが、このN-Spotは常に出現している状態です。
 しかし、目視での観測が通用しないため、これまで発見は出来ていませんでした。」

「それが今回、あらゆる観測方法で存在が明らかになった…」
「はい!このN-Spotを使えば人間世界へ到達する事が可能です!」
「なるほど、大したもんだ」
「はい!やりましたね!」

「……」



歓喜は束の間だった。
しばし沈黙した後、指令が口を開く。







「……隠すな、全部言うんだ」

「え…」
「そんな上手い話あるわけ無いんだ」
「……」

“地点”に問題があるんだな?」

「……はい」

「N-Spotのある地点は、ちょうど敵艦隊の主力空母が停泊している地点…
 想像以上に範囲が狭い、と?」

「ハッキリ言うと、空母自体がN-Spotの“入り口”なんです…
 しかも、そこまで到達するには敵の凄まじい弾幕の中を突き進む必要があります。
 つまり、このN-Spotを突破するのは空母に突撃する覚悟で挑む者…
 尚且つ人間世界という未知の領域に挑む覚悟を持つ者でなければ…到達は不可能です。」


「…SP隊の全面出撃、か」


「はい。カントーの情報部は既に極秘で特攻命令『LEVEL E』を前提とした作戦立案に
 入っています。作戦実行に際し、残存する全地方のSP隊をカントーへ派遣させる予定だそうです。
 実質これが、私達の“最後の作戦”になる見込みです。」

「そうか…作戦実行予定日は?」




「はい、あくまでも予定ですが

 作戦実行日:12月23日
 作戦名:最終作戦(LEVEL E)
 目標:トウキョウ

 以上になります」



「分かった、その方向でこちらも派遣隊の調整を進める。
 カントー上層部へ通達しろ、ジョウト地方、御作戦に全面協力する”と。」

「了解しました。」
“最後の作戦”か…」
「……長かったですね」
「あぁ」
「8ヵ月が数年のようでした…」
「あぁ」
「私達…このまま消えるんですかね」

「分からない。ただ…」

「ただ…?」

―――……
















ヒュウ――…
冬の風は乾燥した冷たい空気を北から運んでくる。
今はその冷たさが、戦争の最後の局面を彩るのに一役買っていた。


―個別通信―

ピッ

M-177「セレン…」
S-30「どした?ミライ…」








ザ――――…ザザ…



【暗転】













『いやだ』
『しにたくない』

「無駄」

『どうしてころすの』

「お前達は人に近付きすぎた」

『ぼくらはわるくない』

「私達も悪くない」
「だが私達の方が強い」
「だからお前達はここで死ぬ」

『しぬ?』
「死ぬ」
『しぬの?』
「死ぬ」
『いやだ』
「死ぬ」
『しにたくない…』
「死ぬ」
『いやだ…』
「死ぬ」
『い…y…』

確立
確立



確立。

“うっわあぁああぁぁああ!!!グシャァッ ザサ ゛――…”

「カエレ…」

“緊急…!緊急…!尋常じゃない数の…敵が…う…うぁあぁぁああぁあぁああぁ!!!!!!!!!”

「カエレ……」

“どうした!応答しろ!応答しろ!!!”

「カエレェ…」

“ザザ――……敵が…!敵が来ます!!!
 な! ?何だあれは!?わ!来る!来る!わあぁあ! !(ブツッ…”

「カエレェ……」

“ァァアァアア――――ッ!!! !!!”

「カエレェ…!」

“落ちろォォオオオオオオッッ!!”
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…ドッ …ドンッ……ドンッ!バンッ!!キイイィィ―――

「カエレェ……!」

“どうよ?世間は春だよ?桜が綺麗になる季節だねぇ。
 なのに君達は引きこもって今日も逃避行!ハハハハ!なにこれ?
 メシウマ?久しぶりにメシが美味いよ!アハハハッ!
 いやぁ君達には関係ないかハハハ腹痛ぇハハハ!”

「カエレエェエッ!」

“あっははァ!! なーんだァ!! そこまで知ってるんだァ!! 
 つまらないだろう!! 退屈だろう!!
 未来は見えない方が楽しい!!
 誰もがそう言うじゃないか!! なら、そうしてやろう!!
 残念だなぁ、実に残念だぁ。
 せっかくここまで来たのにね。
 はい、ゲームオーバーです。お疲れ様でした。”

「カエレエェエェッッ!!」


“まぁいずれ気付くだろ、
 自身の能力の無さに”

「カエレエェエェエエェッッ!!!」

うるさい…
うるさい…うるさい…うるさい…うるさい…
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!

裏切り者が!!!!!!!!
善人面をするな!大嘘つきめ!!!!

命を嘗めるな…
恨みを嘗めるな…
恨んでやる…恨んでやる…
地の底だろうが何処であろうが…
お前を一生恨んでやる!!!
自分でも怖いくらいになぁ!!!!

あーそうさ!壊れてるさ!
出来損ないさ!落ちこぼれさ!
欠陥品さ!不良品さ!
それがどうした!!!!!
本当に壊れてるのはお前の方だ!!
悪気すら持とうとしないお前の方だ!!
人から言われると人一倍騒ぐ癖に!!
自分は人一倍プライド保護か!!!
自意識過剰すぎるんだよ!!!
お前なんかが人間を名乗るな!!!
お前なんか人間ですら無い!!!
人間味の欠片すら無い!!!!



「カエレ…」
「カエレ……」
「カエレェ…」
「カエレェ……」
「カエレェ…!」
「カエレェ……!」
「カエレエェエッ!」
「カエレエェエェッッ!!」
「カエレエェエェエエェッッ!!!」


お前なんかに分かるか!
私の気持ちなんかが分かるか!!
踏み潰された人の心が分かるか!!
二度と立ち直れないくらいまで!!
何故お前は更に追い討ちをかける!!
生きようと必死な命を!!
何故お前は平然と捻り潰す!!!
泣いて何が悪い!!
叫んで何が悪い!!
弱音を吐いて何が悪い!!
素の自分を出して何が悪い!!

『生きて』
何が悪いッ!!!!!






どうして…

消されるの?




「生きたい…」

ただそれだけのことなのに…







どうして…?











『やんだ あとで なかす』








【明転】


ザ――――…ザザ…









M-177 「今日…二次防衛ラインが落ちたよ」



S-30「……それだけか?」

M-177「うん…それだけ」
S-30「わかった…報告ありがとう」
M-177「うん…」

























M-177「…ゴメンね」
ブツッ




































12月12日。
『ニ次防衛ライン』陥落。