Wafty’s diary

情熱は止まらない 私達は進み続ける

其の拾漆

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其の拾漆
『誰かを追うように私はその街を走りまくった。(迷宮)』

8月19日(朝食○ 昼食自由 夕食○)
7:30 フィレンツェ  (約3時間30分/274km) →
●ミラノに向かう途中、水の都ヴェネチアを訪れる
着後 :ヴェネチアちょっぴり自由行動
ヴェネチアの中心サンマルコ広場へ、3時間程のフリータイムを取る
ヴェネチア  (約3時間30分/276km) → その後、北イタリアの中心都市、ミラノへ
20:00 :ミラノ   / ホテル着
●夕食は名物ミラノ風リゾットとカツレツを用意                  ミラノ 2連泊【ベストウエスタン・ガッレス】

リアルト橋へ行った後、再び迷宮へと戻っていく。
 
迷宮」という言葉が既に何度も登場しているように、このヴェネチアは本当に迷路の様な街だ。
実際、家族の中で比較的、道に迷う事が少ない私でも結構不安になるくらいだ。
 
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「っしゃぁ!鬼ごっこスタートなんだぜ!(・ω・´*)ヒャッハー!」
「うゎ…マジかよ……何処行くの?^^;」
「来れば分かるー!さぁ追いつけるかなー?w」
「…って、早…ww」
 
 
 
やはり、始まってしまった例の鬼ごっこ
“鬼ごっこという子供染みた言い方をすれば実に可愛いものに見えるが、ここは迷路のど真ん中。
 
迷う事は即ち自分の居場所が分からなくなる事を意味する。これはかなり怖い
出口が見当たらなくなるのである…
 
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一方方向に突っ切れば良いと言うものでもない。
 
途中でT字路になる場所や、強制的に方向が変わったりする場所、
ずっと行ってから行き止まりになる場所……というように至る所に迷宮脱出妨げる壁が幾つもある。
そんな“迷宮”で迷ったら大変だ。下手すれば一日中、街を彷徨う事になるw
 
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そんな悪夢を見ないためには、彼女を追いかけるしかない。
 
 
 
出口に導く使者とでも言うべきか………見失ったら………最後……数少ない看板に頼るしかないw
 
それだけは…カンベンだ!
 
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「………………本当に迷路だ…この街…………どっちに行っても………まるで…………」
 
 
“不思議だよね……何処に行っても同じ風景に見える…………”
 
 
ふと彼女の言葉が脳内に聞こえた。
彼女の能力の内の一つ『心理察知 (レジェックス)』……
テレパシー能力と言う方が分かりやすいのかもしれない。“彼ら”だからこそ可能な技とも言える。
 
 
「……迷ったら負け…か……」
 
 
 
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その直後、彼女はこう呟いた。
 
 
“この街は……キミを試すには丁度いい…………本気で勝負してみる?”
 
 
直感的に感じた。この「本気」という言葉に大きな意味がある事を。そして、冗談抜きでは無い事を。
これは自分への挑戦状だ。そう…彼女が与えてくれた最後のチャンスだとしたら…逃す手は無い。
 
 
 
「………いいだろう、やってくれ。絶好の機会だしな。」
 
 
 
“クスッ…君らしいね……分かりました。では、貴方を試します……最後まで付いてこれるか……勝負…”
 
 
「………面白い。……来い……」
 
 
 
 
“…いいでしょう……では………本気を………出しますよ………”
 
走るスピードが上がった。
 
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軽めの走りから一変して、かなり早くなる。迫りくる建物がまるで風の様に通り過ぎてゆく。
 
 
「……早い……だが………見失ってたまるか!もう…俺は……何も…………なにも………」
 
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「失いたくないッ!
 
 
 
追いかけた。
 
ただひたすら追いかけた。それでも差は僅かにしか縮まらない。彼女は本気で自分を試していた。
そして、自分も本気でそれに応えた。何がここまで自分を本気にさせたのだろう……それは一つの錯覚だ。
 
 
 
今、彼女を見失ったら…何もかもが消えてしまう…
 
 
 
そんな錯覚に襲われていた。
 
過去の記憶が脳内に過り出していく……
 
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怖かった…目の前で人が消えていくのが…
怖かった…何かを失う事が…
怖かった……大切にしていた仲間を失う事が………
 
ずっと怖かった……何もかも。
 
怖くて仕方が無かった…失う恐怖は、と言うほど刻み込まれているから。
生きる希望も無くすくらいの記憶が何度も刻み込まれた。嫌というほど。
 
だから今まで全てが怖かった…
 
そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
 
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でも、彼女は私にそれは違うという事を教えてくれた。
そして、ずっと忘れていた感情を思い出させてくれた。
 
 
あの頃の純粋な気持ち…
何ものにも穢されていなかった、本当の自分の姿を…思い出させてくれた。
 
それは本当に単純な事だった。
でも、その単純な事に気付かなくなっていった今の自分にそれは衝撃だった。
 
彼女は私にとって恩人に等しい存在となった。例え人じゃないとしても、その恩恵は計り知れない。
直接的に命を救ったというよりは、を救った…みたいなものだろうか。正直、言葉にしにくい。
 
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皆、何処かで恐怖を感じていて…それを隠すためのキャラを維持して……
そのキャラを維持するために足掻いて……必死に毎日を生き続けている。
 
ただそれだけの事だった。
 
 
 
あの頃…俺が見た彼女の姿はとても今でもハッキリ覚えている。
絶望の淵に追い込まれていた時に、言ってくれた言葉が力強かった。。。
 
 
 
怖いのは皆、同じ。それを普段は自分のキャラで隠しているにすぎないんだ。
だから……もっと自信持っていいんだよ!今は小さいかもしれないけど…まだ人生始まったばっかりじゃん!
きっと君を待ってる人がいる。何処かできっと待っている!君は…私が…死なせない!!絶対に!!!!
 
 
 
 
その時は、本当に泣いた。
 
 
今……彼女のこの言葉を“本当”に俺に向かって言ってくれたあの人は……何処で何をしているんだろう。
彼女の存在はその人の言葉から誕生したと言っていい。勿論、発生源は自分の脳内ではあるが。
でも、心の底から嬉しかった。おかげで、そこから再び歩き出せたのだから…そして今がある。
 
彼女は今でも傍で見守ってくれている……あの頃と同じように。
そして……今も自分の心の中で静かに眠り続けている………そっと静かに……
 
 
 
思いだした……あの頃の自分を…………本当に純粋だったあの……夏を…………
 
 
 
 
 
「おめでとう!!!」
 
……ハッ
 
我に返る。そこは 『ゴンドラ』の船着き場がある場所だった。
気が付くと俺は最後まで追いかける事が出来ていたらしい。この勝負に勝ったんだ…
目の前には綺麗で穏やかな日常が広がっている……実に穏やかに見えた……
 
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「よくついてこれたね!スゴイスゴイ♪」
 
 
 
 
“そうか……そう言う事だったんだね………あの頃の思いを……君は………”
 
 
 
 
わざと少し視線をそらした。
 
 
 
 
 
 
「logitec?」
 
 
「ううん何でも無い!よしっ!ここまで来れば抜け出せたようなもんだな!!鬼ごっこ面白かったなw」
 
「うん♪」
 
 
 
 
 
 
 
 
空が一層、蒼く見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次回、これを体感せずして『水の都』は語れない。
其の拾捌に続く。
 
 
この話は、実話に基づいたハクションです。…ハッ…ハックション!!((←